2022.2.17-27「CONNECT」絵画と額縁

■ Artist
清田 悠紀子・能登 真理亜 ・藤木 貴子・真鍋 修
■ Framer
GALLERY&額工房ART WILL  村野 生

4名の画家と、1名の額縁職人による展覧会を企画・開催いたしました会場内外でお伝えしきれなかったことなどを少し振り返り、
記事にまとめてみたいと思います。(ちょこちょこ追記更新いたします。)

額装を手掛けてくださったのはこちら

1984年絵の具屋 國太郎として創業。現在は GALLERY & 額工房 ART WILL ( アートウィル ) と店名を改め、デザイン・加工・塗装・仕上げの全工程を自社にて行う。 作品を主役にした額作りを心がけており、木目を生かしたシンプルなものから、胡粉や箔仕上げなどを施した装飾的なものまで、幅広く手掛ける。

今展は ①完成作品に額装を施したもの 、②額作家に合う額縁を先に仕立て、その雰囲気を受けた作品を描かれたもの という二方向の作品で構成した展覧会です。
双方の仕事の相性の良さ+ART WILLさんの手に合うかという点に少し比重を置いて、作家を選定しました。
正直、②の向きで作品制作を依頼することには考える部分も沢山ありました。職人の神経の消耗具合も半端ではないでしょうし、額縁の役割とはそもそも・・?、というご意見もあるかもしれません。通常は作品が先にあり、その世界を物理的にも精神的にも守ったり、増幅させる効果があるのが額装ですし。
ですが、画家と職人の仕事を間に立ち見る中で、②の普段とは異なる向きの制作・思考プロセスをそれぞれの立場にお願いしてみたら、さらに素晴らしいものが生まれるのではという確信があり、今展を企画開催いたしました。これは両者がプロであり、深い理解を得られたからこそ成立した展覧会でした。

当然の話ではありますが、職人が仕事の手を尽くした額装に比べ、作家が自前で行う額装には様々な事情から、作品との相性・品格を適切に合わせきれないことも多く、無額装での展覧会が多いことも、額縁と絵画についての関係を展覧会を通じて再考し、見てみたいと思うきっかけにありました。
そして、コロナ禍で展覧会の中止や延期が相次ぐ日々の中、様々な画材が廃番になっていったり、絵画を取り巻く職人さん方が閉業される姿を相次いで目にする中で、いいものを作る人同士が良い形で出会い、長く仕事を共にできる関係性を作りたいと、勝手に危機感のような思いを抱いたりしていたこともあります。

前置きが長くなりました!出展作品より、いくつかの作品例をご紹介いたします。


清田悠紀子 「春の記憶」 , SM ,アクリル・キャンバス

先)作品 → 後) 額装

作品の躯体は木でできており、飾り部分などは削り出して表現されています。
作品世界と呼応するように、画中の雰囲気に近い表現で施された金箔が、作品の世界を柔らかく外へ押し広げるとともに、外界から作品の密やかさを守っていました。


藤木貴子「スイセン」,273mmx136mm,日本画・紙本彩色

先)額縁 → 後) 作品

額縁の所々に見える、花粉のような優しい黄色味が作品内の色味と美しく響き合っています。
胡粉を用いた独特の色味と質感を持つ白の塗装も、日本画作品との相性抜群でした。


能登真理亜「机上の雨粒」,F3号,日本画・紙本彩色

先)作品 → 後)

枠に見える銀箔の装飾が、画中のラインと面白いリズムを生んでいます。
箔の持つ冷たい質感は、作品の澄んだ青みと静けさに具体的な感覚を添え、世界観を際立たせています。


真鍋修「花と猫」(410mmx205mmx2枚)
,日本画・紙本着彩

先)額縁 → 後) 作品

ふたつの窓がひとつの額として収められた特異な形ですが、作家が練り上げた構図から、いい意味で額の特異さに目がいかぬほど、絵として自然でありながらも、この形でないと描くことのできない間合いが生まれました。


真鍋修「無題」,水彩

先)作品 → 後)

水彩のラフなドローイングが、この手の作品には珍しい浮かし額装となっていました。
ぴしっと作品を張ることで緊張感が生まれ、額内に出る影がモノとしての存在感を高めていました。 画像では伝わりづらいところですが、中の胡粉の独特な質感と、中に向かって斜めに立ち上がる形など、小さいながらも細部へのこだわりの詰まった額装でした。


作品に合う額縁というものは大変難しく、作品との相性の他にもお客様のお好みや、他のインテリアとの調和など、様々な検討事項が発生します。
展覧会場においても、作品世界や色彩をシンプルに味わうには額縁を外し、作品のみをお楽しみいただくことが適している場合も多分にあります。
しかし、会場で多くの作品を見て、販売する中で、美術作品としての高尚さを損なわずに生活空間で作品世界の品を保ち続けるために、額縁の果たす役割は非常に大きいモノがあると常々感じてきました。それは、展示空間からお手元へと迎えていただいた後にも、会場で目にしたときの感動や感情を、場所に左右されずに感じていただきたいというギャラリーとしての願いのようなものでもあります。

会期中には、こうした絵画と額縁にまつわる悩みについて、作家さんを始め、コレクターさん、ギャラリストさんと、予想以上に多くの方と会場でお話を共有することとなり、改めて深く、面白いテーマであると感じています。

今回制作いただきました額縁の、細かな制作意図などについては、ART WILLさんの Instagram にも記事がございますので、ぜひご覧ください。

そして、今展のもうひとつの見所、額作りへのこだわりが垣間見える ” モスマイト “については、また別の記事で紹介いたします
モスマイト?という方に簡単にご説明いたしますと、ものすごーく反射しない最新技術の詰まったアクリル板です。上に掲載の作品画像のうち、真鍋修作品「無題」以外は全てこのモスマイトが入った額装でした。正面から撮影しても、レタッチなしで何ら反射なしという素晴らしいもので、生でご覧いただくとそのあまりのすごさに・・気がつかない方続出でした!
会期中、三菱ケミカルのご担当者様にお越しいただき、色々とお伺いできましたので近々まとめたいと思います。いましばらくおまちください。

企画意図を理解し、タイトなスケジュールをこなしてくださった作家様方、額装を始めとして多々ご協力頂きましたART WILL様に、
改めまして感謝申し上げます。ありがとうございました!

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